本を届け続けるために、何を諦めるのか――世界の出版物流から考える
日本の出版業界では物流の持続可能性が大きなテーマになっています。雑誌の減少による配送効率の悪化や運賃・人件費の上昇は長らく課題になってきたものでしたが、ここに来て「トラック新法」への対応が必要になり待ったなしの状況になっています。
もちろん業界としても手をこまねいているわけではなく、2026年7月には取次協会が9項目からなる「出版流通合理化案」を発表。出版社・書店との協議も始まり業界あげて今後どうしていくべきかの検討に入っています。
一方、諸外国でも「本をどう届けていくか」ということは大きな課題のようです。流通制度も市場環境も日本とは異なりますが、事例から参考になることも多そう。
最近見つけた諸外国のニュースから「本を運ぶこと」の事例をまとめてみました。
1.アメリカ Penguin Random House 独立書店向けに、最低注文金額なし・原則2日以内の配送を繁忙期に実施
米国のPenguin Random House(PRH)は、2026年10月26日から2027年1月11日まで、独立書店向けに繁忙期の2日配送プログラムを実施します。2011年に始まったプログラムで、今年で15年目を迎えたそうです。
米国は日本以上に「本の繁忙期」がはっきり決まっていて、特にこのホリデーシーズンは人手も輸配送のアセットも他業界との奪い合いになっているシーズンかと思います。
このプログラムの配送対象は新刊だけでなく既刊も含まれ、複数の物流拠点から出荷されます。天候や輸送事情による制約はあるものの、原則2日以内の配送を目指すものだそう。
特徴的なのは、最低注文金額を設けていないことです。独立書店は一定金額まで注文をまとめる必要がなく、必要な冊数を必要なタイミングで発注できます。
書店にとって、回転率を考えたら商品が売り切れることは必ずしも悪いことではないでしょうが、問題は即補充が出来ないことです。必要な時に少量ずつ補充するというサプライチェーンが組めているならば書店は過剰な在庫を持たずに販売を続けられることになります。
小口・短納期配送は物流サービスであると同時に、書店の在庫リスクを抑えながら販売機会を増やす仕組みとも考えられます。
2.ドイツ 「本を翌朝届ける仕組み」をどう残すか
ドイツは発注後24時間以内に本が届く国、として日本のお手本(憧れ?)になっていた国でしたが、ただ、その既存の輸送網維持にも課題は多いようです。
Umbreitの夜間配送を取材した記事では、約25書店へ100個以上の荷物を配送し、返品も同時に回収する様子が紹介されています。そのなかには、わずか一つの小包を届けるために約30km走るケースも!
書店減少と小口化が進めば配送効率は悪化します。このあたりは日本とかなり似た問題を抱えています。こういったことに対応するために業界を挙げた取組が進んでいます。

